2025年2月8日の第165回月例発表会において,野田 虎之介(B4),徳重 柊人(B4),富成 泰生(B4),森 梓恩 (B4),松浦 薫(B4),井若 勇志(B4),藤原 直己(B4)の7名が以下のタイトルで発表を行いました.
ダイナミックマップシステムのための車両走行環境に基づくエッジサーバ動的負荷分散手法(野田 虎之介)
近年,センサで取得した周辺環境情報を車両間で通信・共有し,協調的に走行を行うことで交通の安全性を高める協調型自動運転の研究が進められている.従来の協調型自動運転においては,通信で共有された周辺環境情報が車両ごとに個別に管理されており,周辺環境情報の効率的な活用が課題となっている.この課題に対して,車両や路側センサから取得した動的な周辺環境情報を高精度道路地図に重畳することが可能な情報通信プラットフォームであるダイナミックマップシステムを用いることで,一元管理が可能となる.従来の中央集約型ダイナミックマップシステムでは,大量のアクセスに伴う処理負荷や通信遅延が問題視されてきた.一方,エッジサーバを地理的に分散配置し,各サーバがデータを管理する分散型ダイナミックマップシステムの研究が進められており,処理負荷の分散や通信遅延の低減が期待されている.しかしながら,従来のエッジサーバを用いた分散型ダイナミックマップシステムには,エッジサーバの計算リソースが限られていることや,車両が位置する場所の地理情報が必要不可欠であるため,処理負荷の分散が困難なシステム構造という課題が存在する.その結果,特定のエッジサーバにアクセスが集中した場合,計算リソースが不足し,交通安全に関わるサービスの提供に支障をきたす可能性がある.本研究では,特定のエッジサーバへのアクセスが増加して性能が維持できなくなる問題を解決するため,車両が集中して処理負荷が増大しているエッジサーバの管轄エリアの一部を隣接するエッジサーバに移譲することで処理負荷の分散を実現する手法を提案する.
AR環境におけるタッチタイピング可能な仮想入力インターフェースの検討(徳重 柊人)
近年,AR(Augmented Reality)に関する研究が行われており,特に Microsoft HoloLens や Apple Vision Pro などの HMD(Head Mount Display)を用いた ARHMD は,汎用的な対話型情報端末として使用が検討されている.ARHMD における文字入力手法は,手を用いて仮想空間に配置されたキーボード(以下,仮想キーボード)に直接触れて操作する形式である.しかし,既存の入力手法では人差し指のみを用いた操作であり,直感的な操作が可能である一方,複数の指で入力できない課題点がある.また,キーを直接操作する必要があるため視線や頭部,腕の動きが求められユーザビリティが物理キーボードと比べ低下する.本研究では,ARHMD を用いた文字入力における,頭部や腕の動きを削減し,複数の指で入力精度を向上させることを目的とする.そして,タッチタイピング,すなわち手元を見ずに入力が可能な仮想キーボード入力手法を提案しユーザビリティを検討する.
路側センサと歩行者端末の統合利用による歩行者移動情報を活用した歩行者特定の精度向上(富成 泰生)
近年,交通事故の発生件数や死傷者数は年々減少傾向にある.一方で,依然として歩行中の交通事故における重傷者数は年間 6,800 件に達しており,これらの事故を防止するためには衝突事故防止技術のさらなる高度化が求められる.そのため,車両に対して歩行者の存在を通知し,警告を発するシステムの研究が進展しているが,車両だけでなく,歩行者自身にも警告を提供することで,交通事故のさらなる軽減が期待される.この観点から,路側センサやカメラを用いた歩行者特定に関する研究が進展している.しかしながら,路側センサが検知した歩行者と歩行者が所持する端末を特定する必要があるため歩行者への直接的な警告を提供することが難しい状況にある.そこで,路側センサと歩行者端末の統合利用を行う.歩行者情報を取得する手段としては,路側センサであるLiDAR(Light Detection and Ranging)及び,歩行者端末に搭載されている GPS(Global Positioning System)センサが挙げられる.LiDAR は,検出範囲内において歩行者の高精度な各時間の位置情報を取得可能であり,GPS センサは,5~10m の誤差があるものの,歩行者の属性情報や各時間の位置情報を取得可能である.これらのデータを統合することで,路側センサが検知した歩行者と歩行者が所持する端末特定が可能となる.また,以降は各歩行者が所持する端末を歩行者端末と表記する.
車両位置情報を利用した車車間通信隠れ端末問題軽減のための無線リソース割り当て手法の検討(森 梓恩)
高信頼・低遅延な車車間通信の実現のために,セルラ通信を活用した Cellular V2X(C-V2X)が注目されている.C-V2X における車車間通信では,パケットを送信する時間と周波数を表す無線リソースに対して,無線リソースの使用状況や無線リソース予約情報を基に,無線リソースを自律的に選択する SPS(Semi-Persistent Scheduling)方式が導入されている.しかし,SPS 方式では隠れ端末問題が考慮されていない.パケットを送信する車両からパケットの受信が可能な距離を通信範囲とするとき,隠れ端末問題とは,互いにパケットを受信できない通信範囲外に位置する隠れ端末車両同士が同じ無線リソースを選択している場合に,隠れ端末車両同士の通信範囲が重なる重畳領域に位置するさらし端末車両において,パケット衝突が発生し,パケットが受信できないという問題である.そこで,隠れ端末問題が発生する恐れがある隠れ端末車両同士が,異なる無線リソースを選択するように,車両位置情報と無線リソースを対応付ける無線リソース割り当て方式を検討する.車車間通信のシミュレーションにおいて,パケット受信率,パケット衝突率,スケジューリング遅延を評価する.
移動環境における安定的配信継続のための MPQUIC パケットスケジューラーの検討(松浦 薫)
現代の多くのモバイルデバイス(例:スマートフォン)は,Wi-Fi やセルラー通信など複数の通信インターフェースを搭載している.しかし,単一の通信経路を前提とする従来の通信プロトコルでは,移動環境下で高い通信速度を継続的に要求するアプリケーションに十分対応できない場合がある.2021 年に標準化された新たなトランスポートプロトコルである QUIC は,IP アドレスの変更があっても同じコネクションを維持する「コネクションマイグレーション」機能を搭載している.さらに,複数の通信経路を同時に利用できるマルチパス拡張(以下,MPQUIC)に関する研究も進展している.ここで,Wi-Fi とセルラー通信という異種ネットワークを併用する場合,ユーザーの観点からは,経路の利用優先度が異なる.一般に,Wi-Fi は無料で利用可能であるのに対し,セルラー通信は従量課金制や通信容量制限といった制約があるため,後者を冗長に利用するのは避けるべきである.MPQUIC では,経路の利用優先度を設定し通信相手に通知する機能が備えられているが,移動環境下で配信の安定性を確保するため,優先経路のスループットが十分に安定している場合には非優先経路の冗長利用を抑えつつ,必要に応じて両経路を併用するための動的な利用優先度設定メカニズムはまだ確立されていない.そこで本研究では,複数の通信経路が利用可能な移動環境において,優先経路のスループットが安定している場合は非優先経路の冗長な通信を避け,かつ安定した配信を継続できるマルチパス QUIC のパケットスケジューラーの設計・評価を行う.
時空間グリッド予約における空間効率を考慮した自動バレー駐車制御方式の提案(井若 勇志)
近年,搭乗者の乗降場所から駐車場内の駐車スペースに車両を自動で駐車し,必要な時に乗降場所まで自動で車両を呼び出すことができる自動バレー駐車に関する研究が行われている.ドイツでは,無人かつ自動で駐車できる自動バレー駐車が承認され,世界でも期待されている.複数の車両が自動バレー駐車を効率的に行うためには,各車両間で走行を調停する必要がある.この課題に対しダイナミックマップにおける時空間グリッド予約を利用した自動バレー駐車が検討されている.先行研究では,従来の方式と比較して待ち時間が削減され,駐車場回転効率の向上を示した.しかし,この方式では車両サイズを考慮できておらず,駐車場の空間を効率的に利用できていない課題がある.そこで本研究では,駐車場全体をグリッドに分割し,各車両に対して複数のグリッドを予約することで,車両サイズの違いに対応できる自動バレー駐車制御方式を提案する.さらに,時空間グリッド予約による駐車スペースの動的確保を行うことで,空間効率向上を図る.
時空間ボクセル予約による複数ドローンの飛行調停手法の検討(藤原 直己)
近年,ドローンは国土交通省の総合物流施策大綱において,物流における重要な新技術のひとつとして位置付けられており,都市部のような建造物等の構造物が多数存在する環境においての活用が検討されている.ドローンが複数台飛行する空間において,周辺環境の障害物だけでなく,他のドローンとの衝突を避けるために衝突回避行動をとる必要がある.ドローンの衝突回避手法として,各ドローンが障害物を検知することで衝突回避を行う手法,ドローン同士が位置情報などの情報を共有することで衝突を回避する手法がある.しかし,ドローンの台数が増えることによる空域の混雑や,構造物が多数存在する環境での飛行は衝突回避性能の低下を引き起こすという問題がある.また,従来の手法では衝突回避行動をとる際,迂回し元の経路に復帰するという動作をとるため,経路が遠回りとなり,衝突回避行動をとる必要がない状況と比べ旅行時間が大きく増加することで,飛行効率が低下するという課題もある.そこで本研究では,構造物が多数存在する環境において,ドローンの台数が増加しても衝突回避性能および飛行効率を維持することを目的とし,時空間ボクセル予約による複数ドローンの飛行調停手法を検討する.