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第132回月例発表会(M2)

2021-11-27

2021年11月27日の第132回月例発表会(M2)において,林 聡一郎 (M2),上原 夏紀(M2),中井 綾一(M2),奥西 理貴(M2),田中 佳輝(M2)の5名が以下のタイトルで発表を行いました.

安全運転支援のための AR を利用したフリースペースの段階的可視化手法 (林 聡一郎)

20211127 SHayashi

車両同士の交通事故の中でも交差点における衝突事故が多発している.その原因の1つとして,交差点による死 角で対象車両の認識が困難となることが挙げられる.そこで,高度交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems) により,見通しの悪い道路環境に対する安全運転支援シス テムが提案されている.しかし,交差点における死角による衝突事故は減少する傾向にとどまる.よって,先進運転 支援システム (ADAS) で使用される車載センサや無線通信機能やディスプレイを活用した新たな安全運転支援システ ムを検討する必要がある.
 先進運転支援システムには,車載センサとして普及しつ つあるステレオカメラやレーザー光を用いる LiDARで距離測定や物体検出が可能である.また,5G や Wi-Fi といった無線通信規格によって車車間通信が可能である.さらに,HUD(Head Up Display) によって車両のフロントガラスに AR を表示してドライバに情報を提示できる.
 本研究では,車載センサや無線通信機能,HUDを活用し,死角のある交差点における車両同士の衝突事故を防止する新たな安全運転支援システムを提案する.

基地局周辺の混在状況を考慮した車両誘導による V2X 通信の効率化 (上原 夏紀)

20211127 NUehara

ITS高度化や自動運転社会の実現に向けた研究開発が活発している.また,車車間及び車両と路側機を接続する方式の一つとして,セルラー通信方式に基づくセルラーV2Xの標準仕様が3GPPで規格化され,それらの通信技術がITS・自動運転の高度化に寄与する可能性について,技術検討や実証実験が進んでいる.上記の技術を用いることで車両間での情報共有に加えて,路側機やネットワーク上のサーバで、車両やインフラ設置センサから収集したデータ,さらには,既に保有しているデータにより新たな価値が付与された情報を車両に配信することが期待できる.
 Release15において5Gに向けて3GPPが新規に規定した無線アクセス技術,NR(New Radio)が策定されるなど,今後は5G通信による高速大容量、多数同時接続,超高信頼・超低遅延通信化が期待される中,現在5Gにおけるカバレッジエリアの小ささによるプローブデータ入手の効率性が課題となっている.
 前研究ではダイナミックマップを用いてカバレッジエリアの情報を共有することでプローブデータ入手の効率化を図っているが,一ヶ所に車両が集中する可能性が考慮されていないためQoSが保証されない問題がある.
 そこで本研究では前研究の仕様に加え,基地局にQoSが保証される最大接続台数を紐付けて管理し,車両にQoSが保証されかつプローブデータが効率的に集められる経路を提供する手法を提案し,それによる交通流の円滑化を評価する.

V2X 通信プライバシ向上のための周辺車両数に応じた可変仮想車両による仮名方式 (中井 綾一)

20211127 RNakai

近年,V2X(Vehicle to Everything)通信に関しての研究が盛んに行われている.このV2X通信により,車両の事故防止や交通渋滞の削減につながることが期待されている.しかし,V2X通信を用いたアプリケーションでは,利便性のために,位置情報や個人情報を周辺機器に送信することから,プライバシ保護が重要な課題となる.この課題を解決する有効な手法として,仮名を用いた手法が知られている.仮名とは,特定の車両の位置情報などを追跡できないようにするため,V2X通信機器に割り当てられる仮の識別子である.
 本研究では,周辺車両台数に応じて,擬似的に生成した仮想車両同士で協調的に仮名を変更することで,攻撃者による位置追跡を困難にさせる手法を提案する.

マルチパス QUIC を用いた移動時の通信経路喪失によるパケットロス削減手法 (奥西 理貴)

20211127 ROkunishi

公共交通機関や自家用車での移動中にスマートフォンを用いてビデオストリーミングや音楽,ゲームなどのエンターテインメントコンテンツを楽しむ機会が増加している.こうした大容量コンテンツを扱うために,屋外ではセルラ通信だけでなく5G通信や無線LANを併用し十分な帯域を確保することが重要となる.これを実現する技術のうち,トランスポート層で複数の通信経路の併用を実現する技術として,マルチパストランスポートプロトコルが注目されている.一方で,移動によって5Gや無線LANの通信が通信範囲外となると,パケットロスや再送処理が発生し通信の利用効率を低下させる.しかし,マルチパストランスポートプロトコルの研究において,この問題を扱ったものは見られない.
 本研究では,スマートフォンが事前に取得した周辺の基地局やアクセスポイントの情報と,公共交通機関や自動車から取得した将来の移動経路に基づき,走行位置ごとにパケットを送信する通信経路を適切に選択することで,複数の通信を効率的に併用する手法を提案する.

走行情報と顔方向に基づくドライバーの歩行者に対する認識の推定 (田中 佳輝)

20211127 YTanaka

近年,ITSの分野において研究開発が活発に行われ,道路交通の安全性や利便性の向上を目的とした運転支援システムが普及してきている.その中の1つに,衝突の危険がある際にドライバーに対して警告を行うことで安全運転を支援する衝突警告システムがある.このシステムは,車両に搭載されたセンサを利用し,車両や歩行者などの対象物との距離や相対速度をセンシングすることで実現される.このようなシステムは既に実用化されており,交通事故の原因となる運転を減らすことに貢献している.また,V2X通信を利用することで,周辺の車両や歩行者との位置情報や速度情報などの共有が可能となり,それらの情報を利用した協調型運転支援システムの研究が行われている.このようなシステムでは,センシングのみでは得られない情報を利用した運転支援が可能となり,より安全性や利便性の高い運転支援が実現できると期待されている.
 しかし,現在検討されている協調型運転支援システムは,ドライバーの周辺環境に対する認識状態を考慮した運転支援を行っていない.例えば,周辺に存在する全ての歩行者に対して警告を行った場合,既に認識している歩行者に対する警告による煩わしさや警告に対する慣れによる効果の低下,システムへの信頼性の低下といった問題が発生する.そのため,安全運転支援システムにおいて,ドライバーの歩行者に対する認識状態を推定することができれば,既に認識している歩行者に対する警告を削減し,警告に対する煩わしさや慣れによる効果の低下、システムへの信頼性の低下を軽減するなど,より効果的な情報提供の手法を検討することが可能となる.

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