2023年1月14日の第144回月例発表会(M2)において,杉本 涼輔(M2),塚崎 拓真(M2),竹内 一真(M2),山本 浩太郎(M2)の4名が以下のタイトルで発表を行いました.
V2X 通信におけるプライバシ向上のための仮想車両を用いた協調的仮名交換方式の提案(杉本 涼輔)
近年,車両とあらゆるものが通信するV2X(VehicletoEverything)通信に関する研究が盛んに行われている.中でも自車両の速度や位置情報等を周囲に送信し,共有する安全メッセージは車両の事故防止や渋滞の削減につながることが期待されている.しかしこのメッセージは平文で送信されることがほとんどのため,位置プライバシの保護が問題とされており,この問題を解決するために仮名を用いた手法が標準化されている.仮名とは,通信に含まれる情報を用いた車両追跡を防ぐために通信機器に割り当てられ,実際の識別子の代わりに通信に用いられる仮の識別子のことであり,時間経過等をトリガーに変更を繰り返す.
本研究では周辺の車両台数に応じて擬似的に仮想車両を生成し,それらを含めて協調的に仮名を交換することで攻撃者の位置情報追跡を困難にし,周囲の車両台数に関わらず高い位置プライバシを確保すると同時に仮名生成数の削減を実現する手法を提案する.
IoT デバイスの通信セキュリティ向上のためのホームネットワーク仮想化フレームワーク(塚崎 拓真)
近年,IoT(InternetofThings)の可能性が注目され,今後あらゆるモノがネットワークに接続,利用されることが予想される.しかし,従来,ネットワークに接続されていなかったモノが接続されることにより,セキュリティ上のリスクも高まっている.IoTデバイスは,最低限の性能を発揮するCPUやメモリしか保持しておらず,適用できる機能が限られるという問題がある.そのため,ログ出力や暗号化などのセキュリティ対策の適用は困難となる.また,今後はホームネットワーク内で閉じたデバイス間の通信によって連携を行う形になることが想定され,各デバイスにおいて更なるセキュリティ対策を行う必要がある.
そこで本研究では,コンテナ上にセキュリティ対策を施したProxyを作成し,IoTデバイスに対して,仮想的にセキュリティ対策を適用するシステムを提案する.また,OpenFlowを用いて,ホームネットワーク内の通信を監視するフレームワークの構築も検討する.
未知領域探査のための複数ドローンを利用した動的な三次元環境地図生成によるAR 可視化(竹内 一真)
近年,ドローン用途は急速に成長しており,中でも小型ドローンの特徴である機体の大きさを活かして,人間が入れないような狭い空間での活躍の場も増加しており,将来的には狭小空間の未知領域探査への応用が期待されている.しかし,狭小空間でのドローン飛行は遮蔽物が多く,操縦者は遮られた視点からの操縦を必要とするため,死角領域内のドローン操縦では,ドローンを視認できない中,衝突することなく,安全に操縦する技術が求められる.
そこで,事前に走行環境をマッピングし作成した三次元環境地図をAugmentedReality(AR)により表示し,死角領域内を可視化することにより,狭小空間での未知領域探査におけるドローン操縦性向上や安全性向上が期待されている.しかし,未知領域でのドローン操縦において,事前に三次元環境地図を用意することは困難なため,ドローンが一からマッピング,自己位置推定などを行う環境でも同じ効果を発揮できるのか示されていない.また,ドローンはバッテリー上限が短く,短時間での効率的な探査を必要とするため,複数ドローンの利用を検討されているが,環境中のドローンの数が多ければ多いほど,衝突のリスクは高くなり,また,探査領域の重複も考えられる.
本研究では,狭小空間による死角領域内において,未知領域探査へ投入するドローン数の増加に伴う,探査効率の問題を軽減するため,各ドローンがSLAM(SimultaneousLocalizationandMapping)を用いて取得したセンサ情報を統合した上で,ARにより操縦者の死角領域内を可視化する方式を提案する.
車両移動効率化のための時空間グリッド予約を利用した自動バレー駐車制御方式(山本 浩太郎)
自動運転技術により搭乗者の乗降場所から駐車場内の駐車スペースに車両を自動で駐車し,また,必要な時に駐車スペースから乗降場所まで自動で車両を呼び出すことができる自動バレー駐車に関する研究が行われている.複数の車両が駐車場内を効率よく移動する際には,各車両間で走行を調停する必要がある.各車両間で走行を調停する方法として,車両に搭載されたセンサを利用する方法がある.しかし,車両に搭載されたセンサで得られる情報は限定的であるため,駐車場内を安全に走行するためには各車両の車間距離を大きくする必要がある.各車両の車間距離が大きくなると,複数の車両が駐車場内を効率よく移動することが困難となり,搭乗者の待ち時間の増加や駐車場の経営効率の悪化に繋がる.
そこで,車両の走行調停手法としてダイナミックマップの時空間グリッド予約が先行研究で検討されている.先行研究では,この基仕組みを単一交差点や道路合流部を想定して構築し,旅行時間について考察が行われ,信号機を用いて調停する場合や車両に搭載されたセンサのみで調停する場合と比較し,旅行時間を削減することを示した.本研究では,駐車場内の複数の車両移動を効率化するために,時空間グリッド予約を利用して自動バレー駐車における複数の車両移動を制御する方式を提案する.