2022年3月3日〜5日の情報処理学会第84回全国大会において,西川 瑳亮(B4),齊藤 慶一(B4),鈴木 彩門(B4),土居 大輝(B4),佐々木 雄大(B4),国本 典晟(B4)の6名が以下のタイトルで発表を行いました.
ビーコンレンジ署名によるV2X通信なりすまし検知手法(西川 瑳亮)
近年,ITSの分野において,自動運転やV2X通信の研究が盛んに行われている.その中で,クラウドを利用した安全運転支援サービスがあり,注目されつつある.一方で,クラウドを利用したサービスに対する攻撃は脅威となり検討する必要がある.そういった攻撃の一つに車両がクラウドに偽装した走行データや位置データを送信する行為がある.本研究では,それらのような不正データを送信する行為を「なりすまし」と定義し,特定の時間にビーコン通信範囲(レンジ)内に存在したことを証明する「ビーコンレンジ署名」という考えを用いて,車両のなりすましの検知を行う.そして,検知率,検知時間を評価し,本手法の有用性を検討する.
車両密度を考慮したエッジサーバの利用によるダイナミックマップシステムの負荷分散方式の検討(齊藤 慶一)
協調型自動運転の実現に向け,地理的に分散配置されたエッジサーバを活用したダイナミックマップシステムが注目されている.しかし,現在のダイナミックマップシステムでは,エッジサーバ間で処理負荷が偏った際の拡張性が低く,サービス提供に支障をきたす可能性がある.本研究では,渋滞などで特定のエッジサーバの管理エリアに車両が集中するケースにおいて,エッジサーバ間での処理負荷の偏りの解消と拡張性の向上を目的とし,管理エリアの一部をエッジサーバ間で委譲し合う負荷分散方式を提案する.車両の走行シミュレーションを実施し,エッジサーバの処理負荷と通信遅延を測定することで提案方式の有効性を検証した.
複数人によるAR空間文字情報共有時の向き補正手法(鈴木 彩門)
近年,AR体験の複数人共有が進んでいる.一例として,現実空間と仮想空間を融合した意思疎通を行う技術が提案されている.その際,文字情報等の伝達において,ユーザ同士が対面している場合など,ユーザの立ち位置によって表示内容を認識できない場合がある.本研究では,現実空間の任意の場所にAR表示したオブジェクトの持っている文字情報をAR空間文字情報と定義し,これを複数人で共有した際に,文字が各ユーザの方向を向くようにオブジェクトの向きを補正する.モバイルARにて,LiDARで生成した共有ポイントクラウドを用いて実装し,オブジェクトの向きの正確性を評価することで,本手法の有用性を示した.
クラウドゲームにおけるネットワーク遅延低減のための入力予測と分散処理(土居 大輝)
現在,ゲーム産業ではクラウドゲームが注目されている.そこで問題となっているのがネットワーク遅延で,ユーザ体験のリアルタイム性を損なう要因となっている.先行研究では,ユーザの入力傾向を学習して次の入力を予測し,突発的な入力に対しては,起こりうる全状態を描画し,それらを送信して遅延を軽減した.全状態を描画して送信するのは通信状況や状態数によっては大幅な遅延に繋がりかねない.そこで本研究では,ユーザの入力の予測を一つに絞らず,分散コンピューティングでその割合に応じて計算資源を割り当てて,確率の低い入力にも対応可能にした.実験ではUnityを用いて遅延時間を評価した.その結果,遅延時間が減少した.
Webコンテンツに応じたHTTPプロトコル切替によるページ読込み時間削減手法(佐々木 雄大)
Webページ読込み時間の増加はユーザ満足度に影響し,ユーザは読込み速度の遅いWebページから離れる傾向にある.それに対し,Webアクセスを高速化するためにQUICが開発された.しかし,Webページが多数の小さなサブリソースで構成されている場合,QUICがTCPと比べて大きな利点を提供しないことが指摘されている.すなわち,どのような場合においてもHTTP/3が最適なプロトコルであるとは限らない.そこで本研究では,読込むコンテンツ内容に応じて最適なプロトコルを選択することで,Webページ読込み時間を削減する方法を提案する.様々なWebコンテンツにおいて,HTTP/2とHTTP/3の読込み時間を評価し,最適なプロトコル選択アルゴリズムを検討した.
ホームネットワークにおけるデータ特性を考慮したSDNによる優先度制御手法(国本 典晟)
IoT機器の普及やスマートホーム技術の進歩が著しいが,現在のインターネットサービスプロバイダはIoTのQoS要件を考慮した通信制御をしていない.そのため,スマートホーム通信が逼迫し,重要なパケットが損失することが懸念される.この課題に対し,通信を遅延耐性に基づき3つのカテゴリに分類し通信制御を行う研究が行われているが,このカテゴリ分類は昨今のインターネットを通じたコミュニケーションの需要の高まりを十分に考慮できていない.本研究では,複数のデータ特性を考慮し,QoS要件に基づき通信の優先度を決定する.各優先度のスループット,遅延,ジッタ,パケットロス率を評価し,優先度制御手法の有効性を検討する.